正当防衛とは?から過剰防衛になる基準等に至るまで、この制度を【何となく】で理解している人が沢山います。
そこで、それらの大筋の線引きを解説します。
原則は原則であり、例外も存在しますので悪しからず。
【正当防衛とは?】
3つ存在する<犯罪行為をしても、罪に問いません>とする項目(違法性阻却事由)の一つです。
難しい表現は抜きに説明します。
【今、現に犯罪被害を受けるような緊急事態で、相手を攻撃する以外に他に回避する手段が存在しない】
このような場合にのみ、貴方が犯人を攻撃する違法行為は罪に問いませんってモノです。
つまり、緊急ではなかったり、逃げることも可能なら正当防衛は成立しません。
理不尽かどうかは成立には関係ありませんので。
【正当防衛と過剰防衛の線引きは?】
この基準が全てではありませんが、大筋としては
【貴方が被害を受けそうな犯罪】
と
【貴方が犯人を攻撃する犯罪】
これらの刑罰の軽重を見比べて決めます。
<例 1>
貴方は今バットで殴られそうな状態にあります。
これは傷害罪被害に遭いそうな状態です。
傷害罪の刑罰は
【15年以下の懲役、又は50万円以下の罰金】です。
貴方はこれを辞めさせるために素手で犯人を殴り倒すとします。
これは相手が怪我をしない程度であれば暴行罪です。
暴行罪の刑罰は
【2年以下の懲役、又は30万円以下の罰金】です。
貴方が被害を受けそうな犯罪=15年以下の懲役
貴方が犯人を攻撃する犯罪 =2年以下の懲役
これらを比べると、貴方が犯人に加える攻撃の方が軽いと言えるので正当防衛になります。
<例 2>
貴方は今バットで殴られそうな状態にあります。
これは傷害罪被害に遭いそうな状態です。
傷害罪の刑罰は
【15年以下の懲役、又は50万円以下の罰金】です。
貴方はこれを辞めさせるために偶然持っていたナイフで犯人を刺し殺そうとします。
これは殺人罪です。
殺人罪の刑罰は
【死刑または無期懲役、若しくは5年以上の懲役】です。
貴方が被害を受けそうな犯罪=15年以下の懲役
貴方が犯人を攻撃する犯罪 =死刑
これらを比べると、貴方が犯人に加える攻撃の方が重いと言えるので正当防衛にはならず過剰防衛になります。
<これだけでは判断できない例>
被害者女性が夜道でナイフを突き付けられて脅され、強姦されそうになりました。
犯人が気を抜いた一瞬に犯人のナイフを奪い、犯人の太ももに突き刺して逃げました。
その後犯人は刺されたことにより死亡した。
先程までの基準で見ると
被害を受けそうな犯罪は強姦未遂罪
犯人を攻撃した犯罪は傷害致死罪
強姦未遂罪=3年以上、20年以下の懲役
傷害致死罪=3年以上の懲役
上限がない分だけ傷害致死罪の方が重罪です。
このケースを先程までの基準だけで見ると正当防衛は成立しません。
過剰防衛になります。
そのため、警察は被害者女性を傷害致死罪の被疑者として書類送検したようです。
これは一時期大きな物議を呼びました。
調べても終局的な判決が見つからないので、不起訴処分なのか、何なのかわかりません。
しかし、これで正当防衛が成立しなければ【感情的には】納得できませんよね。
だから、被害者側が書類送検で、不起訴処分だったとしても訴えを起こし、裁判で戦っていたら民意が反映された判決が出ていたかもしれません。
このように例外に成り得るようなケースはありますが、基本的には
【貴方が受けそうな犯罪】と【貴方が犯人を攻撃する犯罪】で見比べて刑罰の軽重が判断基準となります。
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